2009年12月15日
『寝ない関係』
モト 冬樹著 2009年12月25日発行 756円(税込)
寝ない関係 (ワニブックスPLUS新書)
著者:モト冬樹
販売元:ワニブックス
発売日:2009-12-08
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芸能人の方が著者となっている男女関係の本は、芸能界という特殊な環境に基づいているものが多いので面白くても実際の参考にならないものもよくあるのですが、本書は一味違いました。
著者は長年独身を続けてこられましたが、最近ようやく50代の終わりに近づいて年貢を納めようとされているようです。本書は著者が長い独身時代を経て到達された男女関係の一境地について述べつつ、「寝ない関係」を軸に男女関係一般についても語られています。本書の目次は以下の通りになります。
- 僕が到達した「寝ない関係」という生き方
- 麗しき「寝ない関係」の世界
- 僕の「寝ない関係」構築術
- 「寝ない関係」における付き合い方
- 寝たくても寝れない人たちへ
一冊の本を通じて常に「寝ない関係」ということがテーマになっており、本として統一感があります。
男女の相性がよくお互いに魅力を感じていれば、セックスをしてみたくなるのが自然の感情ですが、そこをあえてしないのが「寝ない関係」です。セックスをしてしまうと、男女間の適切な距離を保ち続けるのが難しくなるのがその理由です。
本書のような主張ができるのは、本書に書かれているように著者が20代の頃に「寝まくった」ことが背景にあります。そのような点において、本書はやはり一般的な感覚と異なっているところがあります。
「寝ない関係」がよいのは、いったん性的な関係ができてしまうと、女性が「回収モード」になってしまうからです。女性にとって男性にセックスを許した後の状況は、お金を貸して返してもらわないといけない状況に似ています。
お金を貸したからには返してもらうのが当然であるように、体を許した男性からは何らかのものを与えられるのが当然であると女性はどこか無意識に思っている部分があります。
肉体関係ができてしまうといわゆる「男と女の関係」になってしまうのは、友人にお金を貸すと純粋な友人関係でなくなってしまうのと同じことです。
お互いに何らかの異性としての魅力を感じている男女にとって、「寝ない関係」がよいのは、「寝ない関係」をずっと続けていることは終わりのない前戯を続けているようなものだからです。
セックスをしない限り前戯はずっと続きますが、実際にセックスをするとその「前戯」は終わってしまいます。とくに女性にとってそのように感じられるかもしれません。
セックスをしようと思えばいつでもそのような関係になれるかもしれない男性が、あえて自分の方から誘わずセックスをしない関係を保っていることもその男性の魅力を高めるため、「前戯」の価値を高めます。
女性が最もセックスしたくなる男性は、お互いに魅力を感じていながらもその男性に性的な余裕があるために、男性の方からも誘おうと思えばいつでも誘えるのにあえて誘ってこないような男性です。
著者が「寝ない関係」という境地にたどり着かれたのは、若かりし頃に「寝まくった」時期があるからでしょう。
本書は「寝ない関係」のすすめですが、そのためには「寝まくる」必要があるので、本書のテーマを裏返すと「寝まくる」ことのすすめにもなっていると思います。
女性に対していくら性的に余裕を持っているように振る舞おうと思っても、実際に性的に満たされていなければ、本能的な女性特有の感覚によって鋭く見抜かれてしまいます。
性的に満たされていない男性に女性であることを意識されながら人間関係を続けるのは、女性にとって何となく安心できず落ち着かない状況です。
女性とよい関係を築くためには、男性は性的に満たされている必要があります。このあたりは、結婚すると独身の時よりモテる理由の一つの説明になっています。
本当の意味で女性とよい関係を築こうと思ったら、逆説的に女性と「寝まくる」のがよいということになるのかもしれません。最後の章のタイトルが「寝たくても寝れない人たちへ」と人生相談的な内容になっているのも、締めとしてうまくできています。