2009年12月17日
『マグネシウム文明論』
矢部 孝/山路 達也著 2010年1月5日発行 756円(税込)
マグネシウム文明論 (PHP新書)
著者:矢部 孝
販売元:PHP研究所
発売日:2009-12-16
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本書を昨日書店で眺めてその内容に目を見張り、早速ブログの記事にしようとホクホクしていたら、昨日すでに小飼弾さんのブログで以下のように紹介されていました。
「まぎれもないスゴ本。内容、構成、そしてタイミング。今年出た新書ナンバーワン。」
本書の共著者となっているライターの山路達也さんは、小飼弾さんの本の共著者でもある方です。本書に書かれている著者のビジョンが実現したら世界に大きな変化をもたらすことでしょう。
本書で提唱されているのは、「マグネシウム循環社会」です。この言葉は本書で初めて知りましたが、本書で以下のように整理されています。
- 太陽熱を利用した淡水化装置を使って、海水中の塩化マグネシウムを取りだす
- 熱を加えて、塩化マグネシウムを酸化マグネシウムにする
- 太陽光励起レーザーで、酸化マグネシウムを金属マグネシウムに製錬すする
- マグネシウムを交通機関や発電所などの燃料として利用する
- 燃料として利用したあとは、酸化マグネシウムが残る
- 3へ戻り、酸化マグネシウムあどを太陽光励起レーザーで再び金属マグネシウムに製錬する
要は炭素を酸化してエネルギーを取り出している現在の状態で炭素が果たしている役割をマグネシウムに置き換えようということです。
炭素は二酸化炭素になってしまうと回収が容易ではありませんが、マグネシウムであれば本書で説明されている諸技術を用いて循環させることができるということです。
本書では具体的な方法や数値を提示しながら、その過程の各段階を開発してきた、あるいは開発しつつある著者たちの工夫が解説されています。
マグネシウムは海水中に膨大な存在しているようです。日常生活ではあまり馴染みがない元素ですが、植物の光合成には欠かせない元素ですし、酸化マグネシウムは下剤としてもよく使われています。
本書に書かれていることが本当に実現可能かどうかの判断はここではできませんが、いずれにしろ時間の経過とともに明らかになるはずです。もしも本書に書かれていることが経済的にも成り立てば、世界の将来像は大きく変化することでしょう。
不確実性はリスクのように確率分布を描いて予期できない事柄を意味しますが、否定的な出来事が起こるというニュアンスで用いられています。
しかしながら、リスクという概念が望ましいことと望ましくないことの双方を対称的に含んでいるように、不確実性という概念も両方を含んでいるはずです。
不確実性という言葉は、今回の金融危機によって広まったため否定的なニュアンスを持ってしまっていますが、今までに想像もできなかったような新技術の出現も不確実性という言葉で表すことができると思います。
世界には今まで予期できなかったような否定的な出来事がまれに起こりますし、それと同じように予期できなかったような肯定的な出来事も起こるはずです。
今回の金融危機は世界の金融市場が一つになっているため、不確実性に基づく危機がすみやかに世界中に伝播しました。これは世界がグローバル化したためですが、グローバル化はよいものも速やかに世界中に行き渡らせることができます。
ここ数年はグローバル化の否定的な側面にスポットライトが当てられていましたが、本書に書かれている夢のような技術が登場すると、世界が一つになっているだけに世界は一気に明るくなる可能性もあると思います。
またここ数年は資本主義の否定的な側面についてもよく語られていましたが、本書にあるような技術と資本主義がうまく組み合わさると、経済的合理性に則って非常に効率よく新技術が実用化されます。
夢のような新技術が出るたびに過剰な期待とバブルが生じそしてはじけますが、エネルギー問題を根本的に解決するような新技術は数百年のオーダーで考えると、お金そのものの概念を変えてしまうかもしれません。
本書に書かれていることはそのような夢を見させてくれます。
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この記事へのコメント
こんばんは。本書。
小飼弾さんのところで気になっていたのですがますます気になりました!
マグネシウムへの転換。こういう転換が現状の貨幣というものにも変わる希望を感じる本ですね。可能性を感じる本なので
是非、手にとって読んでみたいと思います!
最近あまり明るくない話題が多いので、本書のような本で未来に希望を持ちたいところです。本書に書かれていることが実現しそうになれば、遠い将来に「マグネシウムバブル」といった新たなバブルが生じるかもしれません。
ハイブリッドを見ていて思うのですが、あたら新しいエネルギーを求めるより、今ある技術を磨いていくのが現実的かなあと。
食料とエネルギーは他国に頼らないようにできればいいのですが、それはきっとどの国でも難しいのでしょうねえ。
エネルギー問題や地球環境問題は経済学的に語られることが多く、たしかにコストの問題だと思います。
しばらくは今の技術を発展させる流れなので、本書に書かれているような劇的な発展があるとしてももっと先かもしれませんね。
食糧とエネルギーを日本が頼らなくてもよくなるためには、やはり技術革新が必要と思います。
私もこの本のレビューを書いています。よかったら読んでみてください。
本書は夢のある本でしたね。書評読ませていただきました。本書に書かれていることが低コストで本当に実現すれば素晴らしいことだと思います。将来には夢を持ちたいものです。