2009年12月22日
『プレゼントの経済学―なぜ、あげた額よりもらう額は少なく感じるのか?』
ジョエル・ウォルドフォーゲル著 矢羽野 薫訳
2009年11月24日発行 1500円(税込)
プレゼントの経済学―なぜ、あげた額よりもらう額は少なく感じるのか?
著者:ジョエル・ウォルドフォーゲル
販売元:プレジデント社
発売日:2009-11-12
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日本語のタイトルにはプレゼントとありますが、本書におけるプレゼントはクリスマスプレゼントのことです。原書のタイトルにはそのニュアンスがありますが、日本語ではプレゼントの意味が一般化されています。
また本書のタイトルからは行動経済学的な内容を想像してしまいますが、実際は統計データなどに基づいた分析が多く関係しています。本書の目次は以下の通りです。
- 「よろこばせたい」×「うれしくない」=ムダ?
- あなたにあげたそれ、いくらしたと思う?
- クリスマス消費はクリスマス浪費
- もらったとたん価値が目減りする?
- 政府はなぜ現物支給にこだわるのか?
- 世界を席巻した「贈り物」資本主義
- 無駄遣いは100年前から続いている
- 借金をしてまでプレゼントを買いますか?
- 贈り物は義務か?贅沢か?
- サンタクロースはセールスマン
- それでも消費は善なのか?
- 現金と商品券で贈り物の効率アップ
- なぜビル・ゲイツは巨額の寄付をするのか?
- 贈り物で「世直し」をしよう!
章の数は多いのですが、実際の本文のページ数は150ページくらいです。
年末が近くなるとアメリカのクリスマス商戦についての話題が経済ニュースによく出てきますが、本書で著者が主張しているのはクリスマスのプレゼントには無駄が多いということです。
無駄な部分が多い理由は、主にプレゼントを贈り側が受け取る側の好みを把握していないことに由来します。本書では具体的な数字を上げながら、その無駄さ加減やその解決への提案が述べられています。
著者が経済学者ということもあり、本書ではプレゼントという行為を経済学的な視点から分析していますが、贈与という行為は非常に奥が深いテーマです。
本書では無駄をいかにして効率化するかという点が目立つのですが、プレゼントの本質は無駄にあることがあります。与えるものに実用的な価値がないほどそのプレゼントの価値があるということは、とくに男女間でみられます。最近はそうでもないかもしれませんが、女性にアクセサリーの代わりに炊飯器をプレゼントしても喜ばれないかもしれません。
ただし本書で指摘されているように、アメリカにおけるクリスマスプレゼントの無駄が問題なのは、クレジットカードで借金をすることにより行われていることが多いからです。プレゼントはある程度の余裕やその他の精神的な想いを示す役割がありますが、余裕や実体のない想いのために借金をするのは無理があるはずです。
アメリカでは借金によって価値のないクリスマスプレゼントをしているのはたしかに無駄かもしれませんが、日本政府の国債による借金は桁違いです。これは政治家から国民への贈与的な側面がありますが、その贈与的な側面が問題を難しくしていると思います。
たんなる借金であれば経済学的に考えて無駄なことは行われなくなるはずですが、贈与という行為に伴う人間心理の複雑な絡みが関係してくることが問題をよりややこしくしています。
本書を読むと、贈与を経済学的に分析することの有効性がわかりますが、それと同時に贈与を経済学的に分析することにおける現時点での限界といったようなものも感じることができます。
問題の解決をややこしくしているのは、まだその本質が十分に認識されることにより経済学に取り入れられていない観点ですが、そのあたりは日常的な事柄でありながらあまり意識できていない心理的な側面を多く含んでいるはずなので今後の課題であると思います。


