2009年12月23日
『小宮一慶の「深掘り」政経塾』
小宮 一慶著 2009年12月28日発行 1575円(税込)
小宮一慶の「深掘り」政経塾 ― 世の中がまるごとよくわかる、モノの見方、考え方
著者:小宮一慶
販売元:プレジデント社
発売日:2009-12-10
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本書は著者の目から眺めた政治、経済、教育など、日本の社会問題について掘り下げられています。今までは経済的な視点の本が多かったと思いますが、本書では政治的な内容についても言及されているのが著者の今までの本とは少し違う点です。
タイトルに「深堀り」とあるように、本書では意識的により深く分析されている書き方がされています。本書で述べられていることは、たとえば以下のようなものがあります。
- 景気が回復すると日本は大ダメージを受ける
- 税金は、消費税に統一すれば不公平感がなくなる
- 日本の食糧自給率はぜんぜん低くない
- 太陽電池が普及すると戦争が起こりやすくなる
本書は一読すると意外に思われることがよく書かれていますが、その意外に思われるところに深堀りが必要な部分があります。また本書では著者のやや厳しめな口調が感じられるところがあります。
日本が将来成長・発展するにあたり、問題となりやすい点、ボトルネックとなりそうなテーマが幅広く採りあげられており、日本の将来はこれらの問題をいかに合理的に効率よく解決するかにかかっていると言えるかもしれません。
本書の締めの部分は日本の観光産業をいかに発展させるかになっていますが、これは日本が世界に対して開かれて外国人と日常レベルでの交流をする方がよいという考えがよく表れていると思います。
ある程度の代表的な観光地をすでに見た外国人の方に対し、さらに日本のどの都市を案内するかという著者の問いかけがありましたが、本書を読んでいるときにたまたまその都市に自分がいたのが面白く感じられました。
本書に書かれているくらいのレベルで皆が議論できるようになると、日本の将来は明るいと思うのですが、そのためにはやはり教育と自発的な学習が必要です。
著者が本書のような本が書けるのは、長年のインプットと自分の頭を使って物事を考え続けてこられたことによると思います。
そのような習慣がなかった年配の方と話をする機会が最近多いのですが、いろいろ話をしようとしても、そのようなことは(自分には)「わかるわけない」「難しすぎる」「無理」などの返答ばかりで話がそれ以上進まないことがあります。
こちらから見ると時間をかけて考えればその方も必ず理解できるはずなのですが、どこかで「自分には理解できるはずがない」という強固な思い込みがあります。
実際の理解を妨げているのは、問題自体の難しさよりも、自分には理解できるはずないという自分に対する根深い思い込みです。おそらく過去の学校教育の時に植え付けられていると思います。
そのように考えると、学校教育では知識や考え方の習得はもちろん必要ですが、時間をかけて考えれば自分も理解できるという自信を身につけるようにすることが重要です。少なくともできないという思い込みを植え付けるような場になることは避けるようにしないといけないと強く思います。