2010年01月04日
『下り坂社会を生きる』
島田 裕巳/小幡 績著 2009年12月24日発行 680円(税込)
下り坂社会を生きる (宝島社新書)
著者:島田 裕巳
販売元:宝島社
発売日:2009-12-10
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宗教学者と経済学者のお二人が、日本の「下り坂社会」について語り合った対談です。お二人とも学者としてややはみ出している印象を受けるところが共通しており、そのあたりも本書を面白くしている要素の一つです。
島田裕巳氏はもともとは宗教学者ですが、最近は『宗教としてのバブル』や『資本主義2.0 宗教と経済が融合する時代』などの対談など、経済とも関係している本も出されています。本書の目次は以下の通りです。
- 成長神話の終わり
- 政治家と官僚の下り坂
- 経済学の下り坂
- 大学の下り坂
- 職業の下り坂
- お金の下り坂
- 脱成長を生きる発想
思っていることがかなり自由に語られてるので、学者の方の対談ですが難しさはなく気軽に読める内容です。
日本が「下り坂」な感じがするのは、経済成長率が低下してほぼ横ばいに近い状態が長く続いているからです。横ばいと言うよりも実質的には下降しているのかもしれません。国が今まで蓄積してきた国民のお金を借りて使っている分ゲタを履かされて底上げされています。
バブル崩壊後日本は20年間の低成長期間が過ぎましたが、20年経ってもまだ先が見えない状態です。
日本については40年ごとに上昇と下降のトレンドを繰り返しているという説がありますが、その説が正しいとするとあと20年は下降トレンドが続くことになります。もちろんたんなる説ですが。
たしかに経済成長は低調なのですが、生活の質は改善し続けています。去年1年で300万円を稼いで30万円の自己投資に使った人が、今年も去年と同じように300万円を稼いで30万円しか自分の勉強に使っていないからといって成長していないわけではありません。
それと同じように、日本も企業、政治、家計も毎年投資を続けています。10年前、20年前を思い返すとよく分かりますが、いろいろな点で生活の質は確実に向上していると思います。
GDPが増えないといわれますが、これ以上生活に必要なものがあまりないのに、毎年の消費が一定の数値を維持している方がむしろ不思議です。
日本は長年「下り坂」の状態ですが、それでも生活のレベルを向上させ続けているのが逆に驚くべきことかもしれません。「下り坂」の状態を長く続けられるということは、それだけ余裕があるということでもあります。
行動経済学的に考えると損をすることには大きな苦痛を伴うので、給料が低下して生活レベルを下げるのは大きな抵抗があるのですが、実はその過大評価されている苦痛の感覚さえなければ、多くの日本人はもっと楽にさらに少ない消費で生活できるはずです。
相場にはトレンドがありますが、国の経済状況についても大きなトレンドがあるのかもしれません。トレンドには逆らわない方がよいのであれば、本書にあるようにいかにうまく「下り坂社会」に対応するかを考えるのも一つの方法です。相場と同じようにうまくトレンドに乗ることができれば、下降トレンドでも利益を出す方法はあると思います。
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この記事へのコメント
未だに「オウム真理教の危険性を見抜けなかった宗教学者」というイメージがぬぐい去れません。
社会的な制裁は受けたようですが、
もう信用するに足る学者になったのでしょうか。
島田裕巳氏については、お書きのイメージがまだあります。本人が御自身の発言による社会的影響力の大きさを認識されてなかったようです。
どのような社会的制裁を受けたかについては御本人が書かれたものがありますが、学者としての評価は難しいと思います。