2010年01月19日
『マネー資本主義を制御せよ!』
中丸 友一郎著 2010年1月30日発行 840円(税込)
マネー資本主義を制御せよ! (朝日新書)
著者:中丸 友一郎
販売元:朝日新聞出版
発売日:2010-01-13
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著者はエコノミストですが、市場や相場にも深い理解のある方です。過去にも経済や金融だけでなく、株式投資についての本も書かれています。
本書は経済学や経済史についての要点を付いた解説を織りまぜながら、今回の金融危機や今後の国際金融や日本経済の展望についても述べられています。本書の目次は以下の通りです。
- ドラマ「リーマンショック」
- 復習:サブプライム問題と金融危機の解剖
- 戦後最悪の金融危機を引き起こした真犯人を捜せ
- 経済学と資本主義は第三の危機から脱出せよ
- バブルはしたたかな多年草
- 大恐慌との決別
- 国際金融・資本市場の未来予想図
- 金融危機は日本再生への大チャンス:民主党政権への緊急提言
著者は今回の金融危機はすでに底を打ったと見ておられます。そのことは「底」を打つ前から著書で予測されていたようです。
本書を読むと、著者は今回の金融危機に関係する主な経済書や論文の多くを読まれていることがわかります。各章末の参考文献も新書にしては充実していると思います。
金融危機やバブルを含んだ歴史的なことや今回の金融危機については、それぞれ別の本でも解説されていることも多いのですが、それらを著者の視点から統一的に解説されているのが本書の特長です。
今後の日本が採るべき金融政策については、デフレギャップを埋めることや金融緩和などについて述べられており、高橋洋一氏が書かれていることと共通している部分が多いと思います。
本書全体を通じて言えることは、著者は世界経済の成長には楽観的、日本についてはこのままでは悲観的ということです。民主党政権が採るべき方針についても提言されていますが、その提言を容易に実行に移せそうにないところが日本の現状の困難な部分です。
どのようにすればよいかわかっていながら、望ましくない方向に進むのを避けられないのは、いわゆる悲劇になります。悲劇を解消するための方法は、思い煩うことではなく悲劇を喜劇に変えることですが、これはムードつまり気分の問題です。
将来的に日本が良い方向に向かうのは、国に喜ばしさが芽生え始めたときでしょう。良い方向に向かって喜ばしさが生じるというよりも、喜ばしさが生じると良い方向に向かうのではないかと思います。