2010年02月23日
『香港に住む大富豪41の教え』
大塚 純著 2010年2月18日発行 1470円(税込)
香港に住む大富豪41の教え
著者:大塚純
販売元:かんき出版
発売日:2010-02-17
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著者は実際に中国関係の資産運用業務をされている方です。本書は著者が実在の「香港に住む大富豪」との交流を通じて、さまざまな内容の教えを受ける対話形式の物語調の本になっています。
本書のような本は、どちらかというと景気がよいときに出版されることが多いようで、最近はあまり書店で新刊を見かけません。本書の目次は以下の通りです。
- 大富豪が集まると情報が集まる
- 華人・華僑はお金の話が大好き
- 大富豪に学ぶリスクとリターンの考え方
- アジアはこう変わる!
- 中国投資の厳しい現実
本書が類書とやや異なるのは、単なる投資やお金についての哲学だけでなく、現在の世界経済を流れを踏まえた具体的な今後の話が出てくるところです。
大富豪という言葉から連想されるのは、ユダヤ人、アラブ人、華僑などです。とくユダヤ人と華僑はグローバルにたくましく世界中で生き抜いているイメージがあるので、本書のような本の主題になりやすいようです。
実は世界的に考えると日本人も大金持ちです。しかしながら日本人が本書のような本のテーマにはなりません。たとえば「日本人大富豪の教え」などといったような本は見たことがありません。
ひょっとしたら他の言語でそのような本が出ているのかもしれませんが、日本は個としての日本人ではなく日本経済として語られることが多いように思います。
個としての大富豪の存在感がないのは、日本人が「大富豪」になると個ではなく社会的・公的な存在になることが求められているからかもしれません。
今後中国がさらに経済成長すると、華人富豪の数はますます多くなることが予想されますが、本書を読むとそれらの人々の考えを理解する助けになるかもしれません。
本書では華人特有の考え方が多く述べられていますが、お金や投資に関する普遍的な考え方も述べられており、中国に関心のない方でもそのあたりは興味深く読めると思います。
本書には少しですが、中国思想や哲学についても軽く触れられています。一般的にはあまり合理的でないと思われているものもありますが、数多くの華人がその考え方に影響を受けるとすると、実際に経済がそのように動く可能性もあります。
そのように考えると、今後中国が世界経済におけるプレゼンスをさらに増せば、中国思想について理解しておくことは、ビジネスや経済的な見地からも重要になってくるかもしれません。
本書は中国ビジネスを理解するための導入的な本として読みやすく書かれていると思います。本の性質上、具体性にはやや欠けますが、その分エンターテインメント性や読みやすさがあり、気軽に中国ビジネスの世界に触れてみたい方にはとりつきやすい本です。
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この記事へのコメント

今後の中国についてはさまざまな予測がありますが、お書きの通り、影響力が大きくなることは否定しにくいと思います。本書はそのことが物語調にわかりやすく書かれている本でした。