2010年03月08日
『日本破綻 「株・債券・円」のトリプル安が襲う』
藤巻 健史著 2010年3月1日発行 1575円(税込)
日本破綻 「株・債券・円」のトリプル安が襲う
著者:藤巻 健史
販売元:講談社
発売日:2010-03-02
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藤巻健史氏の新刊です。本質的に同じ主張を10年以上続けて来られましたが、氏の予測や提言はなかなか実現しません。狼少年のようになってしまいましたが、結局狼は全然来ないと皆が安心した時に、狼の大群が押し寄せて来る可能性もあります。
景気が悪くなると日本の財政問題がクローズアップされることが多く、周期的に話題になります。最近も不景気が続いており、財政の赤字のため大量に国債を発行しているので、日本の財政問題についてはトピックになりやすい時期です。
本書の目次は以下の通りです。
- 「計画経済国家・日本」の終焉
- グローバル化と、低迷する日本
- 拡大なくして何の分配ありや?
- 拡大のための「円安政策」
- 拡大のための「長期戦略」
- 市場主義の徹底
サブプライム問題の悪化が予想の範囲を超えたこともあり、氏の最近の本はやや自虐的な色彩を帯びていましたが、本書ではそのような雰囲気は少なくなっています。
氏の本は「財政破綻」「資産インフレ」「円安」などがキーワードです。「円安」については、日本円の価値を下げるという意味において、最近話題になっているインフレターゲティング政策と本質的に重なる部分があります。
本書で印象に残ったのは、資本主義、市場主義を徹底させることを強く主張されていることです。日本の財政問題の現状は、国債の市場において市場原理が働かなかったことが理由であると主張されています。
著者は「伝説のトレーダー」なので、市場に対する信頼が厚いようで、マーケットの原理に基づいて日本の金利上昇などを長らく予測されていました。氏の予測がなかなか当たらないのは、日本の国債マーケットにおいて市場主義が働いていないからのようです。
市場に法則があるとすると、いつかは氏の予測は当たりそうに思うのですが、氏の予測が当たるまでの時間がかかればかかるほど、予測の実現は劇的、それも悲劇的なものになりそうです。
本書ではいかにしてその悲劇的な状況を回避するかが述べられているのですが、いままで受け入れられなかったものが今になってすぐに受け入れられるものでもないでしょうし、時間が経つほど受け入れられにくくなっている部分もあります。
日本の財政問題の行く末は興味深い問題ですが、その問題について考える場合に藤巻氏の本は一冊は読んでおきたいところです。本書は現状に合わせて良くまとめられており、読み物としても面白く書かれていると思います。