2010年03月10日
『変わる世界、立ち遅れる日本』
ビル・エモット著 烏賀陽 正弘訳
2010年3月4日発行 777円(税込)
変わる世界、立ち遅れる日本 (PHP新書)
著者:ビル・エモット
販売元:PHP研究所
発売日:2010-02-16
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著者は『エコノミスト』誌の編集長をされていた方で、『日はまた沈む―ジャパン・パワーの限界』『日はまた昇る 日本のこれからの15年』などの有名な著書がある方です。
欧米から見たら日本通、日本からすると国際社会における日本の立場を日本人にわかりやすいように示してくれるような存在です。最近は中国などについてもよく言及されており、今後の中国やインドなどアジアの台頭を予測されています。
本書の目次は以下の通りです。
- 経済危機から脱出する日本の戦略
- 知識サービス産業で成長する日本
- 世界経済は回復に向かうのか
- G20で模索される世界金融システム
- 環境問題が資本主義を変革する
- グリーン大国に化ける中国
- 格差社会は新自由主義を越えるか
- メインバンク・システムの復権
本書に書かれていることはそれほど新味はないかもしれませんが、イギリス人の著者らしい穏当な主張である印象を受けます。
日本がどうするべきであるかについても比較的多くのページを割いて書かれているのですが、たとえばサービス業の規制緩和を行って、国際的に生産性の低い日本のサービス業の労働生産性を上げることなどを提唱されています。
このことは日本でも認識されており、何とかしないといけない課題ではあることをわかっている方も多いと思うのですが、それほど実現は容易ではありません。
日本の諸問題は、何が問題であるかというよりも、現実的に解決をどのようにすればよいかが難しい部分です。日本人は従順で粘り強いために、我慢できるところまで我慢してしまう傾向があり、その性質が変革を遅らせてしまう傾向があるかもしれません。
企業の場合は倒産することによって清算したり、経営をドラスティックに変化させることができますが、国の場合は企業に比べると「倒産」しにくいので、問題が延々と先送りされてしまいがちです。
最近問題になっている日本の財政問題についても、危ないと言われながらもなんとかなっていく状態がしばらく続くのではないかと思います。「倒産」できない悲劇です。
本書は日本のことだけでなく、国際金融や環境問題についても書かれていますが、これらも日本についての論述と同じように穏当なものが多く、刺激的な面白さはあまりないかもしれませんが、全体的に安心して読める本であると思います。