2010年03月14日
『「下げ相場」はこうして儲けなさい』
ピーター・シフ著 鈴木 立哉訳
2010年3月18日発行 1890円(税込)
「下げ相場」はこうして儲けなさい
著者:ピーター・シフ
販売元:東洋経済新報社
発売日:2010-03-05
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本書はタイトルからは内容がすぐにはわかりにくい本です。株式投資の本のように思われ、たしかに投資について述べられている本ですが、本書のテーマはアメリカ経済が2010年代に長期的な下降トレンドを経験するであろうという予測です。
本書には投資アドバイスがふんだんに書かれていますが、基本的にはアメリカ人を対象にしています。投資のみならず、倹約的な生活スタイルに対するアドバイスもあります。本書の目次は以下の通りです。
- 時間旅行をしてみよう---2010年代の景気の見通し
- あなたの資産を守るために---ハイパーインフレの恐怖
- 「お告げ」に惑わされることなかれ---経済崩壊の「容疑者」は誰か?
- 大切な物を失わないために---アメリカ株とどう付き合うか
- 見逃せない投資対象---コモディティの上げ相場に投資する
- 上げ相場にうまく乗るには---金と銀で儲ける方法
- 嵐を乗り切るには---海外に資産を保有する
- 「トップダウン投資法」で勝利をつかめ---どの国に投資すべきか
- 一発逆転を狙うなら---新興市場の魅力
- 無限の彼方へ---これから凋落するセクター、有望なセクターは?
- 倹約の10年---少ないお金でやりくりする
- 荷物をまとめよう---海外移住に備えた準備を
- トンネルの向こう側---光り輝く明日のために
本書における著者の予測の中心は、貨幣や債券、とくにドルやアメリカ国債の長期的な下降と、コモディティの上昇です。これは今後10年くらいの長期的なトレンドであるとされています。
著者は本書を書かれる以前から、アメリカが住宅バブルであること、そしてバブルが崩壊することを予測され、マスメディアでも繰り返し主張されていたようです。
本書が執筆された時期は、本書を読む今からほぼ2年くらい前であることがわかります。その頃はまだリーマンショックも起きていませんでした。この2年間にさまざまな変化がありましたが、おそらく著者の長期的な予測は現在もあまり変化していないと想像できます。
本書はアメリカ経済を中心にアメリカ人向けに書かれている本ですが、日本人が読んでも参考になると思います。なぜなら、世界全体の予測も述べられているからです。さまざまな国について述べられていますが、残念ながら日本についての記述はほとんどありませんでした。
アメリカについては非常に悲観的ですが、つらい時期を通じてアメリカは再生しうるとも書かれており、数十年の長期的な視点で見れば楽観的とも考えられる内容です。
本書の予測はジム・ロジャーズが言っていることと非常に似ています。世界的な視点で投資対象を選定するという点でも同じです。ジム・ロジャーズが好きな人は本書は面白く読めると思います。
本書の著者の主張ははっきりしており、そのはっきりしたスタンスから具体的な投資対象をどのように考えて選定するかという点でも本書は勉強になると思います。
本書の予測が当たるかどうかは、あくまで予測なので何とも言えないのですが、著者の思考方法や経済や投資についての考え方は、たとえその予測が当たらなくても参考にできる点が数多くあります。投資に興味がある方であれば、本書は読んでおいて損はしないと思います。