2010年03月26日
家業再生29
前回は家業再生の数値的な目標を書きました。年商からだいたいどの程度の規模のビジネスかがおわかりと思いますが、5000万円〜1億円くらいのビジネスです。
20年以上前の開業当初は1億円弱の売り上げがあり、数年前のボトム期には売り上げは4000万円台前半まで落ち込んでいました。ビジネスホテルという業種の性質上、支店でも増やさないかぎり上限があります。
これくらいの規模のビジネスを個人レベルで行うにおいては、金額の規模の面で悪い点もあり、よい点もあります。
5000万円〜1億円という数字は、日本人の一般的な給与所得者の収入と比較すると、おおよそ10倍の規模と考えることができます。売り上げを給与所得と比べるのはおかしいかもしれませんが、たんに出入りを管理するという点だけで考えると同じことです。
最初の時点で建物や設備のために4億円程度の借り入れをしましたが、この数字も個人が住宅ローンを借りて家を建てる数字を考えると、おおよそ10倍規模のオーダーで数字が対応しています。
うちの家業の場合は経営状態がよくなかったため、この数字の規模における悪い面が出ました。悪い面というのは、この規模のビジネスだと長期的な下降トレンドにある場合に経営を改善しなくても、経営者が耐え続ければビジネスが続いてしまうことです。
経営状態が悪くなれば、まずは役員報酬を減らします。そしてさらにお金が足りなくなると、個人の貯金で損失を補ったりするなどして延々と私財を減らしてしまいがちであり、まさにうちがそのパターンでした。収入は減る貯金はなくなるで、フローとストック両面において苦しくなります。
もしもさらに10倍規模のビジネス、つまり一年の売り上げが5億円〜10億円規模であれば、早い段階で根本的な改善の必要が認識されていたか、ビジネス自体をたたまざるを得ず、延々とつらい思いをしながらその仕事を続ける必要はなかったことでしょう。
5億円〜10億円規模の金額は損失を補填するにしても、一般的な個人のレベルで穴埋めできる金額ではありません。どのような形であれ、変わる必要があれば、変化せざるを得ません。
父親はビジネスホテルを始めるまでは、一般的な規模の給与所得者でした。ところがいきなり自分の親から借り受けた土地を担保に借り入れをして、いきなり10倍規模のお金を管理するようになったわけです。
あとから言っても仕方ないのですが、このあたりにも失敗の原因があったように思います。自分でコツコツ工夫や勉強をしながらビジネスの規模を拡張していけばよかったはずです。
身にそぐわないものを持ってしまった不幸ですが、いきなり宝くじが当たってそのお金をコントロールできずかえって不幸になってしまうことと本質的には同じことだと思います。
これくらいの規模のビジネスの悪い点を書きましたが、よい点は逆に経営者がやる気になれば改善の可能性も十分にあるということです。なぜなら個人のレベルで全体を把握して管理できる規模だからです。