2010年03月30日
『お金とつきあう7つの原則』
山崎 元著 2010年3月31日発行 1365円(税込)
お金とつきあう7つの原則
著者:山崎 元
販売元:ベストセラーズ
発売日:2010-03-26
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著者の本は過去に何冊か紹介させてもらいましたが、著者のお金について書かれている本の中では、おそらく本書が最も読みやすい本です。テーマも「お金について」ということで、かなり絞り込まれているのも分かりやすい点です。
本書はライターの協力を得て書かれたようであり、語りおろし的な要素が含まれているので、プライベートな体験も交えながら、著者がお金についてふだんより自由に語られている印象があります。本書の目次は以下の通りです。
- お金とは何か
- お金の稼ぎ方・使い方
- お金の数え方
- お金の借り方・貸し方
- お金の守り方
- お金の殖やし方
目次からもテーマがお金に絞られていることがよく分かると思います。一番最初に「爽やかにお金つきあうための 7箇条」が前書きとしてまとめられていますが、お金や人生についての著者の見方が色濃く反映されていると思います。
- 小さな節約をしない
- 「人的資本」に投資する
- お金の計算は安全な方に間違える
- お金は(なるべく)貸し借りしない
- 国内外の株式に分散投資する
- 買値ではなく未来を考える
- 怖いのは市場リスクよりも「人間」だ---と心得る
著者の本を読まれた方はよくおわかりと思いますが、著者の本には独特の合理性とシニカルさが貫かれています。
金融商品についても社会的な利害関係から距離を取った立場で解説されており、金融商品を売ろうとする金融機関の利害と対立してしまう面があります。そのあたりの事情も本書には書かれています。
本書に書かれているような合理的な金融についての見方を多くの日本人が持つことができると、日本のお金の流れも大きく変化して経済にとってもよいと思います。しかしながら、やはり多くの普通の人と話すと金融について問題意識があればまだよい方で、関心すらないことも多いようです。
本書は新社会人が読むことも少しは意識されて書かれているようです。現代社会においては、お金と関わることなく生きていくことは実質的に不可能ですが、お金についてはあまりにも日常的に当たり前なものになりすぎて根本から考える機会がありません。
お金に限らずあまりにも身近にありすぎるものは、逆に根本から考え直すことが難しくなっています。本書はお金に対する哲学的な考察はあまりありませんが、実用的な面については著者の金融における職業人生と合理的な思考を通じて、かなり深い部分まで考察されています。
知らない間にお金について損をしたり、振り回されたりしたくない方は、本書に目を通しておいても損はしないでしょう。とくに資産運用やお金についての本をいままで読まれたことがない方には、本書を強くおすすめしたいと思います。