2010年04月12日
家業再生32
商売をしていると自分の商品がどのような使い心地か、同業他社の商品と比較するとどうかは常に気になることだと思います。ビジネスホテルだと、宿泊したときにどんな感じかが使い心地に相当します。
何かを売ろうとするときには、自分がまずその商品を使ってみる必要があります。というわけで、郷里に帰るとかならず自分のところに、そしてなるべく毎回違う部屋に宿泊するようにしています。
驚くべきことに、両親とも自分の経営するホテルに一泊もしたことがありません。何年か前から自分のところに泊まってみるように、そしてできれば他の同じようなビジネスホテルに宿泊してみるように言っているのですが、いろいろ理由を言ってなかなか実行してくれないので、自分がすることにしました。
毎回帰ると、地元の他のホテルに、そして自分のところに宿泊するようにしています。地元の同業他社のネットにおける口コミはよく見ているのですが、やはり自分で宿泊してみないと分からないところがあるからです。また出張や旅行の時はもちろん、特に用事がなくても東京のホテルにたまに宿泊してみたりしています。
地元のホテルにはもう10以上は宿泊したと思います。当ホテルよりやや評判のよいホテルや、二ランクくらい格上のホテルを中心に宿泊しているので、学ぶべき点はたくさんあります。しかしながら、最近見る目が厳しくなってきたせいか、よいホテルでもよく観察すると改善点がないこともありません。
評判がよいホテルでそのようなところを見つけると、少しホッとしますがあまり健康的な感じではないかもしれません。他のホテルのことは参考にするだけであまり気にせず、自分のところを改善することに集中する方が健全です。
自分が利用者の立場で宿泊すると、最も気になるのはやはりフロントの接客と部屋の清掃です。部屋の清掃が今一つなホテルは、全体もあまりよくない印象を受けますし、細かく観察すると実際にそのようです。
使っている電球、クロス、カーペット、カーテン、ベッドカバーの種類や色、枕や布団の品質、湯沸かし器の種類、テレビについてはハードウェアと番組がどこまで映るか、インターネットとはどのようにつながっているか、LANケーブルはどのようになっているか、冷蔵庫の音や消費電力、椅子やソファの使い心地などがあります。
さらには、室内の絵画、冷暖房の具合、時計や電話の使いやすさ、トイレや浴室の状態、石鹸、シャンプー、カミソリやクシ、スリッパ、ズボンプレッサーの有無、ドライヤーの使い心地、どの程度備品があるか、窓からの眺望、立地、周辺のコンビニや飲食店、最寄り駅までのアクセス、フロントの対応、プランの種類、自動販売機や製氷器、廊下やエレベータの状態、壁の厚さなどをチェックするのですが、なかなか完璧なところはありません。
よいと言われているホテルでも、実際に宿泊してみると不十分な点があるので、自分のところを改善する目標としては、かならずしも完璧を目指さなくてもよいことがわかります。
大事なのは、明らかな落ち度をなくすことと、これは他に負けないという部分を持つことであり、守りと攻めのバランスを取ることです。これらはわずかな違いなのですが、わずかな差が大きな違いになっているようです。
日本においては全体的に供給過多が言われていますが、地元の多くのホテルに宿泊するとその感を深くします。供給がだぶついているのに新たにホテルができるので、競争に負けたホテルが廃業していきます。
このように新陳代謝が行われている業界は競争が成り立っているので、消費者からすると健全な業界ですが、業界内部の人間にとっては常に切磋琢磨が要求されるので容易ではありません。
いろいろなホテルに泊まってみて分かるのは、当ホテルは今のところ苦しいけれども苦しいのはうちばかりではないということです。これは借入金によってバランスシートが肥大しがちな宿泊業界の宿命かもしれません。デフレの時代にはそのような業界において供給が過多だと、全体として構造的に苦しくなるのは避けられません。
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この記事へのコメント
「10」を知ったうえで「1」を選ぶことは、
実はものすごい差があると思います。
他のホテルを自分で体験して分析するという、
bestbookさんの手法に、とても共感します。
共感いただきありがとうございます。状況はなかなか厳しいのですが、失敗しても後悔がないように、できる範囲でやれるだけのことはやろうと思っています。
まだまだ知るべきことがたくさんあるはずなので、今後も試行錯誤しながら身につけたいと思います。