2010年04月13日
『沸騰都市』
NHKスペシャル取材班著 2010年月2月25日発行 1995円(税込)
沸騰都市
著者:NHKスペシャル取材班
販売元:幻冬舎
発売日:2010-02-25
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2008年から2009年にかけてNHKスペシャルとして放映された番組の内容に、その後の話を付け加えて本としてまとめられたものです。450ページ以上ものボリュームがあります。
金融危機が生じるまでは世界的な景気拡大期でしたが、番組のもともとの主旨は新興国を中心として拡大し続ける世界の「沸騰都市」を取材・紹介しようとするものでした。しかしながら途中で金融危機が生じてしまい、世界的な好景気は収縮してしまいました。
本書には、おそらく番組の企画したときには想定されていなかった好景気の後のエピソードが綴られており、その部分が本書をより興味深くしていると思います。
本書で採りあげられている8つの都市は以下の通りです。
- ドバイ
- ロンドン
- ダッカ
- イスタンブール
- ヨハネスブルグ
- サンパウロ
- シンガポール
- 東京
ドバイに始まりロンドンと続くことが、当時の状況を振り返ってみて、番組の主旨をよく表していると思います。両者とも当時のバブル的な好景気を象徴する都市でした。
それぞれの都市にはスタッフが数ヶ月単位で滞在して取材されており、都市の要人への取材があります。これらの取材はNHKだからこそできた部分はあるのでしょう。本書を読むまで番組の存在すら知りませんでしたが、将来再放送があれば見てみたいところです。
以前にも金融についてNHKの番組を元にした本を紹介したことがありましたが、その本の内容を取材がなされていたときにもLTCMの破綻がありました。
NHKの特集はバブルとその崩壊をはさんでタイムリーに思いますが、これはある程度の必然性があると思います。
NHKがある事柄について特集を組んで放映するような時期は、ある事柄のピークの直前になりやすいと思います。なぜならテレビをいうメディアで多くの人に知られるようになる時期は、その事柄がほとんどの人に知れ渡る直前だからです。
このことから金融的な事柄についてNHKが特集することは、マーケット的には売りのサインになるのかもしれません。
これはNHKに先見性がないということではなく、テレビというメディアがもともと有している性質のようなものです。テレビで一般の人向けに株の特集が組まれるような時期は、多くの場合に売り時であるのと似ているかもしれません。
金融危機によって現在は世界経済の成長は以前に比べると停滞していますが、本書を読むと世界の国々、とくに新興国は成長へのエネルギーに満ちあふれていることが分かります。
本書は取材した事柄に経済・金融的な解釈を加えることなく、どちらかというとたんたんと取材した内容が記述されており、テレビの取材の本来のよさが生きていると思います。
当時のバブル的な勢いは影を潜めていますが、新興国で見られた当時のエネルギーは現在も潜在的にあるはずです。今回の足踏みが終われば、また世界経済は成長を再開するのではないかという希望を本書は読み手に抱かせるような本です。本書にあるような新興国のあり方は、これからますます本格化するのかもしれません。
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この記事へのコメント
NHKオンデマンドで観られますよ。第1回は無料のようですね。
初回の無料分は早速視聴させてもらいました。やはり映像で見るとリアルで本の理解も深まりました。ありがとうございます。
第2回以降については、お金を払って視聴するかどうか迷うところです。いずれにしてもありがとうございました。