2010年04月21日
『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』
アダム・レボー著 副島 隆彦監訳 古村 治彦訳
2010年4月25日発行 1890円(税込)
バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容
著者:アダム・レボー
販売元:成甲書房
発売日:2010-04-17
クチコミを見る
数年前の金融危機の最中に発覚し、6兆円というケタ外れの被害総額から世界中を驚かせた「バーナード・マドフ事件」についての解説本です。事件を通じて、人間のだまされやすさ、とくに金融におけるだまされやすさについての考察があります。
本書にリストがありますが、日本の法人も数百億円規模の損失を被ったところもあります。その割には事件について日本ではあまり詳しく報道されていませんが、本書を読むと事件について大まかなことを理解することができます。
史上最大の金融詐欺とということもあり、カラクリについては複雑なものを想像してしまいますが、その仕組みは実に単純です。というより、金融の面については仕組みなどなく、単にカリスマ的な権威者を信用してしまったということのようです。
舞台は派手で大がかりですが、ことの本質は一般の詐欺事件と変わりないのかもしれません。そのような意味においては、本書は事件の仕組みよりも、事件に関連するアメリカの富豪コミュニティの生活や雰囲気、アメリカにおけるユダヤ人の立場などについて書かれている点などが参考になるかもしれません。
マドフに全財産を預けてほとんどの資産の大部分を失ってしまったという個人の方もいるようですが、本書ではそれらの極端な被害者よりも、たとえば100億円の資産を持っている人が20億円の損失を被ったというようなケースが多いようです。
本書の事件の被害者の方はもちろん悲惨だと思うのですが、たとえば1千万円の退職金をだまし取られてしまったという事件の被害者の方が、被害は少額だとしても同情しやすいかもしれません。本事件は額が大きすぎてお金がバーチャルな存在になっているようにも思います。
本書から学ぶべき教訓は、月並みですが、あまり欲を持ちすぎないこと、投資対象についてはきちんと仕組みを理解しておくこと、権威を過信しないことなどです。
本事件の被害者の方もそのあたりは承知していたはずですが、本事件の首謀者のマドフの魅力やカリスマ性がそれほどであったということでしょう。そのあたりの記述も本書の読みどころと思います。