2010年04月24日
『日本経済の真実―ある日、この国は破産します』
辛坊 治郎/辛坊 正記著 2010年月4月25日発行 1000円(税込)
日本経済の真実―ある日、この国は破産します
著者:辛坊 治郎
販売元:幻冬舎
発売日:2010-04
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共著者のお二方はご兄弟とのことです。お一人はテレビのキャスター、もう一人は金融関係のビジネスマンです。本書は新書と単行本の中間のような感じの本で、二色刷であり図表も豊富で馴染みやすい受験参考書のような印象を受けます。
タイトルに「真実」とありますが、日本は本書は数年前の「小泉・竹中改革」を継続するべきであるという明確な立場から書かれている本です。本書の目次は以下の通りです。
- 暴論に騙されないための日本経済入門
- 歴史から学ぶ〜なぜ日本はこんな国になったのか〜
- 日本沈没を食い止めた小泉・竹中改革
- 政権交代への失望
- 日本を滅ぼす5つの「悪の呪文」
第5章のテーマとなっている「悪の呪文」の5つを以下にに並べると、本書の主張がよくわかるとおもいます。言うまでもありませんが、本書は「悪の呪文」と反対の立場です。
- 経済の豊かさよりも心の豊かさが大切
- 大企業優遇はやめろ!
- 金持ち優遇は不公正だ!
- 外資に日本が乗っ取られる
- 金をばらまけば、景気がよくなる
ある程度の競争とその結果として自然な「格差」を容認することにより、日本全体の成長率を高めるべきであるというのが本書の中心的なメッセージです。
本書では、財政破綻→ハイパーインフレなどとやや不安を煽るような表現もありやや誘導的な感じもしますが、そのような部分を除いて読むと、本書に書かれていることはリーズナブルであると思う方も少なくないと思います。
アメリカの政治で考えると、本書は共和的な立場になりますが、日本にはアメリカにおける二つの民主党が存在しているような状況です。本書に書かれているような政治的立場を取っているメジャーな政治団体はありません。
今回日本で民主党が政権を取った一番大きな意味は、その反動として日本にアメリカの共和党に相当するような政党ができるかもしれないことと思っていましたが、今のところそのような明らかな兆候は感じられません。
日本では政党間の政治的な緊張感はありますが、思想的に真っ向から対立する政治思想的な緊張感がありません。本署に書かれているような立場を取る政党が出現して、その存在が一定数の国民に支持されて本当の意味での二大政党制になると、政策によい意味での緊張感が生じて政治が引き締まり、その結果として経済もよくなるのではないかと思います。
あまりにも競争促進的な政策は社会をギクシャクさせてしまいますが、適度な競争とその結果としての「格差」は社会を活性化すると思います。そのような「真実」を一定数の国民が受け入れれば、自然にそのような政党が生じるはずです。本署に書かれているのは、未来のその政党の主張なのかもしれません。
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この記事へのコメント
日本はたしかに最大の債権国です。日本の借金に焦点を当てている本の多くは、国の資産サイドに対する記述を無視しているものが多いので問題だとは思います。
日本はストックの面では過去の蓄積があるのでまだ今のところはよいのですが、今後のフローを考えると心配な面もあります。フローをよくするためには、やはり国の活性化が必要と思います。そのためにはお書きの通り政策の見直しが必要です。