2010年05月07日
『テンプルトン卿の流儀』
ローレン・C・テンプルトン/スコット・フィリップス著
鈴木 敏昭訳 2010年5月3日発行 2940円(税込)
テンプルトン卿の流儀 (ウィザードブックシリーズ)
著者:ローレン・C・テンプルトン
販売元:パンローリング
発売日:2010-04-16
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タイトルに名前があるテンプルトン卿は投資家として有名なジョン・テンプルトンのことです。世界的に著明な投資家について書かれている『マネーマスターズ列伝―大投資家たちはこうして生まれた』にも登場しています。
有名な相場格言「強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、陶酔のなかで消えていく。」はジョン・テンプルトンの言葉です。
本書の目次は以下通りです。
- バーゲンハンターの誕生
- 悲観の極みのなかでの最初の取引
- グローバル投資の非常識な常識
- 日出ずる国に最初に注目
- 株式の死と強気相場の誕生?
- バブルで空売りするには及ばない
- 危機はチャンス
- 歴史的押韻
- 債券が退屈でなくなるとき
- 眠れる龍の目覚め
テンプルトン卿は95歳まで長生きをされていましたが、本書のあとがきによると2008年のリーマンショック前の7月にお亡くなりになっているようです。
共著者の一人からはテンプルトン卿は大叔父に当たり、本書ではテンプルトン卿のことはジョン叔父さんと書かれています。身近に接したときの教えやエピソードなども豊富です。
本書の目次の一部にありますが、テンプルトン卿は日本にも1960年代の頃からその潜在的な成長力に注目して投資を行い、実際に大きなリターンをあげたこともでも著明な方です。本書でもそのことは繰り返し出てきます。
テンプルトン卿は投資業界で長く活躍された方なので、テンプルトン卿の投資歴を本書でたどると、ここ50年くらいの世界の株式市場の概観を振り返ることもできます。
テンプルトン卿の投資哲学は本書で数多く紹介されていますが、その中でも中心となるのが総悲観のなかで買うという逆張り的な手法です。本書には買いだけでなく、ITバブルの時に空売りをした話などが出てきます。
このブログはもともと本書のような株式投資の良書を数多く紹介するつもりで始めたのですが、最近は株式市場が盛り上がっていないため、あまり紹介できる新刊がありませんでした。本書を記事にできて最初の気持ちに戻った感があります。
テンプルトン卿はリーマンショックの直前に亡くなられたので、リーマンショックの際に投資行動を取ることはありませんでしたが、おそらくあのときの暴落時には買いを入れていたことでしょう。
バフェットや本書のテンプルトン卿について書かれている本を読むと、株式投資で重要なのはやはり暴落した総悲観の時になるべく割安な価格で株式を購入することであることがよくわかります。
テンプルトン卿は昔の日本に投資していたことからもわかるように、以前からグローバルな投資をしている方でした。そのため本書では投資哲学だけでなく、世界経済の大きな流れをどのように株式投資を関連付けて考えるかについても参考になります。
本書はテンプルトン卿一人についてしぼって書かれている本としては、わが国における初めての翻訳書です。株式投資に関心のある方であれば興味深く読めることでしょう。