2010年05月24日
『ユーロが世界経済を消滅させる日』
浜 矩子著 2010年月3月28日発行 1470円(税込)
ユーロが世界経済を消滅させる日~ヨーロッパ発!第2次グローバル恐慌から資産を守る方法
著者:浜 矩子
販売元:フォレスト出版
発売日:2010-03-18
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本書は出てから2ヶ月くらい経つ本ですが、世界経済の現状からして発売当初よりも現在の方が注目を浴びやすくなっているかもしれません。書店でも平積みされています。
著者の本はどちらかというと悲観的な内容のものが多いので、現在のような不安定な時期に目立ちやすい傾向にあると思います。本書の目次は以下の通りです。
- 静かなる崩壊の足音〜EU内で今、起こっていること〜
- 何のため、誰のため?〜ユーロをめぐる歴史と現実〜
- なぜ、どうして?〜リーマンショック前後にEUで起こったこと〜
- 解体に向かうか、統合欧州〜建前統治・本音バラバラ、行きつく先は?〜
- 巨大なドミノが崩れるとき〜通貨大パニックは欧州から始まる〜
著者はもともと欧州に詳しい方のようです。1994年にすでに『分裂する欧州経済―EU崩壊の構図』という本を書かれています。
松藤民輔氏が昔から「ペーパーマネーの終焉と金高騰」を主張し続けてここ数年でようやく花開いたように、著者の予測もこれからようやく注目を浴びる時期になったのかもしれません。
本書はフォレスト出版から出ているだけありかなり読みやすく書かれています。欧州の問題については『2012年、世界恐慌 ソブリン・リスクの先を読む』を読みやすいと紹介しましたが、本書はさらに平易に書かれているので、人によっては物足りない部分もあるかもしれません。
欧州統合が容易な問題でないことは、たとえばもしもアジアが同じような共同体を作ったらどのようになるかを思い浮かべてみるとわかりやすいかもしれません。日本、中国、韓国、ベトナム、タイ等々10ヶ国以上の国が共通の通貨を持つことを考えると大変そうなことは容易に想像できます。
景気がよいときはいいのですが、いったん経済が不調になると好況時に覆い隠されていたさまざまな問題が噴出してきます。
一般的に異質なものが統合するのは容易なことではありません。たとえば男女は異質であり、異質であるからこそ「統合」したくなりますが、好景気の時、つまり恋愛感情があるときはお互い調子がよいものの、景気が悪くなる時、つまり恋愛感情が冷めると「統合」は容易でなくなります。
最初は異質であることに惹かれますが、状態が悪くなると異質であることが反目の原因になってしまいます。実はその時期こそが本当に「統合」できるかどうかの試金石ですが、欧州も現在の状況を乗り越えられるかどうかが本当の統合ににとって重要な場面ではないかと思います。
本書を読むと欧州統合にはさまざまな問題や障壁があることがわかりますが、そのことが恐慌と結び付くかどうかは可能性の問題です。
個人的には、人為的な形で国々を統合させようとすることには少し無理があるのではないかと思います。今後は世界の流動性がますます高くなっていくと思うので、あえて人為的に統合をさせなくても必要に応じて自然に世界全体が統合されるのではないでしょうか。
それを別の形で無理に統合させようとすると、どこかで歪みが生じると思いますが、その歪みがまさに現在の状態であると思います。