2010年06月10日
『午後6時の経済学』
竹内 宏著 2010年月6月30日発行 1470円(税込)
午後6時の経済学
著者:竹内 宏
販売元:朝日新聞出版
発売日:2010-06-04
クチコミを見る
著者は数十年前からエコノミストとして有名な方です。今はなくなってしまった「長銀」の調査部長として活躍されていました。
タイトルにある「午後6時」というのは、現在の日本経済の状態を一日の時刻で表すと午後6時くらいに相当すると著者が感じておられるからのようです。本書の目次は以下の通りです。
- 経済が低迷すると、国民の希望を担って独裁者が現れる---政治
- 経済が国際化し、銀行の数は減った---金融
- 日本的経営の価値は、人材育成の巧みさにあった---経営
- 豊かになり、みんながバラバラになった---国民・消費者
著者が社会人として壮んな時期を過ごされたのは、日本が高度成長によって大きく発展し、バブルとその崩壊を経て、長期低迷した時代とオーバーラップしています。
本書は著者の人生を振り返りながら戦後日本経済をいくつかの点から考察されているので、記述に臨場感が感じられます。時代は大きく変わったとしながらも、日本が輝いていた頃を懐かしむような雰囲気がところどころにあります。
最後にコミュニティーの意義について強く語られているあたりも、そのような感じを抱かせます。
「午後6時」という表現からもわかるように、著者は今後の日本についてはあまり明るいイメージを抱かれていないようです。その理由としてはやはり高齢化社会がありますが、そのイメージもやはり著者の個人史と戦後日本経済史が重なっているためかもしれません。
過去の日本や現在の新興国を見るとわかるように、発展は欠乏している状態から生じます。日本は欠乏のない状態を追い求めて頑張ってきましたが、その状態に達することが発展を止めてしまうという皮肉な状態になってしまいました。
日本に欠乏がほとんど存在しなくなった以上、日本が発展するためには日本以外にある欠乏のエネルギーを利用するしかないのかもしれません。本書では外国人との交流の重要性が指摘されていますが、日本が全国レベルで対外交流を活発にする必要があるのはそのためと思われます。
日本が国際化する必要があるのは、世界的にはまだまだ存在する欠乏のエネルギーと交流するためなのかもしれません。生存についての欠乏が存在しない状態で、日本の若者に欠乏感を抱かせるのは難しい面があります。
トラックバックURL
この記事へのコメント
なんか、もしドラ読んでる時にこのblogの家業再生シリーズが何故か頭に浮かびましたよ。
あと、Michael Jacksonの手記にも感動しました。
私と父がある種の緊張状態にあることは、みなさんよくご存知でしょう。
父はタフな男で、私たち兄弟を一流のアーチストに仕立てるべく、情熱を傾けてきました。
父はとても愛情表現が苦手でした。「愛してる」と言われたことは一度もありません。
ショーで大成功を収めても、「いいショーだった」、それなりのショーだと「気に食わない」としか言いませんでした。
父の眼中にあるのは、ジャクソン家の商業的成功だけでした。その点において、父はプロでした。
彼はマネージメントの天才で、私たちの成功は父のおかげだと言い切れます。
でも、私が本当に欲しかったのは“お父さん”です。
私を愛してくれるただのお父さん。枕や水風船を投げ合って、肩車をしてくれて、「お前を愛してる」と言ってくれるただのお父さんです。
父は覚えてもいないような小さな出来事ですが、私はそのふれあいを心の奥に大切にしまっています。
子どもにとっては小さな出来事がとても大きな意味を持つのです。
父が父らしくあったのはそれっきりですが、それだけで父や世界を少しだけ好きになれる気がするのです。
私も子をもつ父になりました。プリンスとパリスが大きくなったときに、私の気持ちを知ってくれたらいいと思います。
しかし、パパラッチに追い回される私は、2人を公園にも映画にも連れて行ってあげることはできません。
こんな子ども時代を2人は恨むでしょうか。普通の家がよかったと言うでしょうか。そんな時私は、2人のこんな会話を夢見るのです。
「特殊な環境の中で、パパはよくやったよね。最高じゃないけど、誰よりも僕らを愛するやさしいパパだったよね」
2人が、失敗や叶わなかったことではなく、ともに過ごせた時間、2人に注いだ愛情を見て育ってほしいと思います。
私も人間です。失敗も間違いもしてしまいます。それが人間なのです。
子どもたちに駄目な父親だと思われたくない、そう願う私の頭に、父の姿がよぎります。
“父は私を愛していた”それが真実なのです。
赦しはすべての原点です。赦しは世界を癒し、自分自身を癒します。
大人になり、父になり、自分が無償の愛を100%与えられる完璧な人間ではないと気付きました。そして私は、自分の辛い子ども時代の思い出に蓋をしたのです。
私も父に裁きをあたえるのではなく、赦したいと思います。父を赦してあげたいのです。
彼は私のたった一人の父親なのです。痛みの記憶を水に流し、父との新しい関係、その一歩を踏み出したいと願っています。
(Michael Jackson)
「もしドラ」は読みましたが、ブログで紹介する機会を逸してしまいました。最初はこれほど売れるとは思いませんでしたが、やはり売れた一つの理由はあの印象的な表紙だと思います。(内容がよいのはもちろんですが。)
Michael Jacksonの手記ありがとうございます。
今回の家業再生を通じて、自分にとっての父や母の存在は大きく変化しました。家業再生はビジネスの再生なのですが、まだ進行中ながら自分にとっては両親との関係の再生でもあります。そしてそれは現在も進行中です。
いろいろと不十分な点はありますが、両親とも自分たちができる中で一生懸命生きてきたと思います。
そしてそれは両親に限らず、すべての人がそうかもしれません。みんな各々に与えられた状況の中で精いっぱい生きているという意味においては同じですね。


