本--マーケティング
2010年01月06日
『超売れっ子2ちゃん出身作家が明かす ネットでビジネスに成功する方法』
三橋 貴明著 2010年1月20日発行 1500円(税込)
超売れっ子2ちゃん出身作家が明かすネットでビジネスに成功する方法
著者:三橋 貴明
販売元:彩図社
発売日:2009-12-22
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著者は独自の視点から経済のことについて最近数多くの本を書かれている方で、とくにここ数ヶ月は著者の新刊が経済書のコーナーで平積みになっているのが目立ちます。
本書は著者の体験を実例に、ネットでのマーケティングについて述べられています。本書の目次は以下の通りです。
続きを読む2009年11月26日
『フリー〜〈無料〉からお金を生みだす新戦略』
クリス・アンダーソン著 小林 弘人監修・解説
高橋 則明訳 2009年11月25日発行 1890円(税込)
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
販売元:日本放送出版協会
発売日:2009-11-21
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ネット上のコンテンツや検索機能などの多くがフリー、つまりタダであることはすでに日常的な事柄としてほとんどの人が体験していますが、本書はインターネットを通じて世界に広まっているその現象を解説したものです。
著者は「ロングテール」の概念を世に広めた方らしいです。本書で解説されている「フリー」という現象の本質は、インターネットの発達により情報の伝達コストが限りなくゼロに近づいたということが根本にある点で、「ロングテール」と共通しています。
続きを読む2009年11月12日
『「買いたい!」のスイッチを押す方法 消費者の心と行動を読み解く』
小阪 裕司著 2009年11月10日発行 740円(税込)
「買いたい!」のスイッチを押す方法 消費者の心と行動を読み解く (角川oneテーマ21 B 126)
著者:小阪 裕司
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2009-11-10
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昨日紹介した本の著者と同様に、本書の著者もビジネス書の世界では有名な方です。本書のタイトルにあるように、「買いたい!」という気持ちの分析が著者の著作の長年のテーマになっています。
本書に書かれていることは、ビジネスの言葉ではセールスやマーケティングになりますが、それらを通じて人間の心を考察する内容にもなっています。ビジネスは昔の日本語では「商い」ですが、著者は購買心理の「あくなき」探求をされているように思います。本書の目次は以下の通りです。
続きを読む2009年11月08日
『クラッシュ・マーケティング』
ジェイ・エイブラハム著 金森 重樹監訳
2009年11月18日発行 1995円(税込)
クラッシュ・マーケティング
著者:ジェイ・エイブラハム
販売元:実業之日本社
発売日:2009-11-06
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監訳者の名前で買ってしまう本です。この原著者と監訳社の組み合わせは、すでにマーケティングの本として有名な『ハイパワー・マーケティング』にあります。タイトルから想像できるように、本書は前作を発展させたような内容になっています。
本書はマーケティングの本ですが、一般的なビジネスについての本と考えてもよいと思います。自分でビジネスをする方であれば、一度は目を通しておきたい本であると思います。本書の目次は以下の通りです。
続きを読む2008年10月28日
『ヘタな経済学より八百屋のオヤジに訊け』
富澤 豊著 2008年11月10日発行 1300円(税込)
著者はリクルートの関連会社からマーケティングコンサルタントとして独立後、大学の教官になられた方です。本書は現場におけるマーケティングセンスについて集中的に書かれています。
序章に「マーケティングセンスチェック」という25の項目がありますが、その中から以下にいくつか挙げてみます。
続きを読む2008年07月24日
『やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』
荒濱 一/高橋 学著 2008年7月30日発行 1000円(税込)
やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている (Kobunsha Paperbacks Business 19)
一年前に紹介した『結局「仕組み」を作った人が勝っている』の続編です。ブログの記事について、著者のお一人より
「次回作ではもう少し突っ込んで、仕組みの作り方のより詳しい内容、更にケーススタディの充実に注力したいと思います」
とコメントをいただきましたが、本書では「「仕組み」思考」について、具体的な取材から、以下のように9つの本質的なエッセンスが抽出されています。
続きを読む2008年05月13日
『ビジネス脳を磨く』
小阪 裕司著 2008年5月8日発行 893円(税込)
昨日に引き続き、新しい新書「日経プレミアムシリーズ」の一冊です。すでに今朝のsmoothさんの記事で紹介されており、内容や読みどころについていつもながらのわかりやすい解説があります。
著者の本は数多く出ていますが、キーワードは感性です。現代は感性社会になっているので、ビジネスにおいても感性が必要であるということを常に一貫して主張されています。
続きを読む2008年03月17日
『彼女があのテレビを買ったワケ』
木田 理恵著 2008年3月10日発行 1500円(税込)
彼女があのテレビを買ったワケ ―― 男がわからなかった 女が商品を選ぶ本当の理由
女性マーケッターである著者が、女性の購買心理についてわかりやすく書いている本です。アマゾンの画像では地味な印象を受けますが、書店の平積みでは、オレンジ色のオビに著者の顔写真が入っているため、華やかな印象を受けます。
本書は著者の初めての著作のようですが、最初の本と思えないくらいよくまとまっています。長年の実務経験に裏打ちされた内容だからでしょう。
続きを読む2007年11月13日
『透明人間の買いもの』
指南役著 2007年11月10日発行 1365円(税込)
以前に以下の本を紹介しましたが、本書は続編です。表紙からもそのことがよくわかるようになっています。今回も表紙や挿絵のセンスのよさは同様です。
タイトルにある「透明人間」とは、サイレントマジョリティのことです。大多数の人のことであり、本書は「透明人間の生態を世界で初めて解き明かした本である」ということです。
本書のようなとらえ方はしていないかもしれませんが、なんらかのものを数多くの人に売る業界にいる人は、サイレントマジョリティについては一家言あることと思います。それらを洗練された形にまとめたものが本書です。
日常的によく目にする商品やイベントに絡めて、「透明人間」の消費行動を中心に多くの話が語られています。マーケティングの本ですが、実用書というより読み物としての要素が強く感じられる本です。
マーケティングにおいて「透明人間」が重要なのは、以下の理由があると思います。
- 数が多い
- 影響を受けやすい
- 皆がそうである
数が多いので、マーケットに与えるインパクトが大きくなる可能性があります。主体性がないため、一度火がつくと連鎖的に拡大する可能性があります。そして、ある分野では「透明人間」でない人も別の分野ではサイレントマジョリティです。
日本の株式市場では、個人投資家が増加する傾向が今後も続くと思われますが、今後は株式市場でも「透明人間」が増えるということです。「透明人間」の性質からすると、市場のボラティリティは高くなることでしょう。
マーケティングにしても株式市場にしても、その世界で利益を得るためには自分は「透明人間」にならない必要があります。「透明人間」であることは楽ではあるのですが。
2007年11月07日
『なぜ消防署で住宅ローンがバカ売れするのか?』
杉村 昌孝著 2007年10月18日発行 1500円(税込)
なぜ消防署で住宅ローンがバカ売れするのか?―お役所系集団に口コミで売り込む方法
以前このブログで紹介した、以下の本の続編です。
客が客を呼ぶ「集団感染」のスゴイ仕掛け―ゼロから売上900億円つくった私の方法論
著者が「みじめさのどん底」で「あほになりきって」試行錯誤しながら体得された口コミマーケティングのノウハウが、余すことなく述べられています。前著と比べてより具体的であり、人間心理への洞察が深みを増しています。出版社もビジネス書大手のダイヤモンド社となり、著者名も本名になっています。
著者がよく言われている、「あほになりきる」というのは、エゴを無くすということであり、求道的な印象を受けます。
本書での具体例は、役所に対してダイレクトメールを用いた口コミマーケティングにテーマが絞られています。対象となった商品は住宅ローンです。クレームの処理の仕方なども具体的に書かれています。
この本を読んだ数多くの方が、役所に対して本書と同様のマーケティングをすると、役所の現場が混乱してしまって、同じ方法は使うことができなくなるかもしれません。それくらいインパクトのある方法です。しかしながら「あほになりきる」のは誰でもできることではないので、意外にそのようなことにはならないかもしれません。
同じ方法が使えなくなったとしても、本書の根底に流れる方法論や心構え、人間心理に対する洞察には普遍性があるため、マーケティングに関心のある方には有用な本です。
コミュニティ口コミビジネスの観点から、人間の心理について以下のように考察されています。
- 既存の権威、価値観、常識にすがりつきたい
- 自分の欲するラベル、レッテルを貼って欲しい
- 自分の重要性を満たしたい、何があっても自分の価値を認められたい
- 孤独、実存の不安から、癒されたい、共感してほしい、秘密を共有したい
これらの心理の根底には、人間存在の不安定性にある根源的不安があるようです。本書を読むと感じるのは、著者が自分自身の中にあるこれらの心理を超越する過程において著者独自のマーケティング手法が生み出されたのではないかということです。
本書を取りあげたのは、著者ご自身からコメントをいただいたことがきっかけになっています。コメントをいただくことがなければ、もう少し取りあげる時期が遅くはなったかもしれませんが、たとえそれがなくてもブログで紹介していたことでしょう。
2007年10月18日
『好かれる方法』
矢島 尚著 2006年9月20日発行 714円(税込)
サブタイトルを見てから企業向けの本であるということがわかります。本書のテーマは戦略的PRであり、企業がいかにしてマスコミなどの媒体に働きかけて戦略的にPRをするかについて紹介されています。
著者はプラップジャパンというPR会社の代表取締役をされています。いままで企業などに関わってPRしたことについて、守秘義務に反しない範囲で紹介されています。
- 2005年度衆院選の自民党(歴史的圧勝しています)
- ヴィダルサスーン
- 低用量ピル
- キシリトール
- シーガイア
- 六本木ヒルズ
- タマちゃん
いずれも短期間に広まったものばかりですね。成功例が多く書かれていますが、個人的には失敗例についても興味があるところです。
PR戦略の進め方のまとめがあります。
- ニーズを特定する
- 調査をする
- アイディアを出し合う
- 採用されたアイディアをもとに調査、準備をする
- メディアへ働きかける
- 臨機応変に対応する
まとめは一般的な内容ですが、現場のコネクションやノウハウが会社の売りであると思われます。記者会見やリスクマネージメントについてもノウハウが紹介程度に書かれています。
PRの重要性は近年高まっています。身近なところでは、上場企業のIRがあります。株価に直結しているため、経済的な効果がわかりやすくなっています。IRの重要性が高まっているのは、個人投資家が市場に増えているためです。
著者の究極的な夢は日本国のPRだそうです。ご自身の夢もしっかりとPRされています。グローバリゼーションにより、国単位でも今後ますますPRの重要性は高くなってくることでしょう。
2007年09月13日
『女性はなぜ買い物に時間がかかるのか?』
織田 隼人著 2007年9月18日発行 1260円(税込)
男女の考え方や行動の違いを、買い物、マーケティング、仕事、勉強法など、ビジネスと関係ある分野に絞って書かれた本です。二次的な情報ですが、かみ砕かれており、非常に読みやすくなっています。
いくつか本書にあるまとめを下に書きます。
- 男は勝ちたい。女は素敵に見られたい。
- やっぱり女性は男性より細かいところを気にする。
- 女性はルールよりも感情を重視する。
- 電話対応のような割り込みを減らせば、男性の仕事ははかどる。
- 気持ちを理解していることを伝えてあげると、女性の話は早く結論にたどり着く。
- 男の成功哲学を女性に当てはめるのは百害あって一利なし。
ややステレオタイプ化されているきらいはありますが、傾向として参考になります。
男女の違いについては、女性でも仕事のできる方はしっかり把握しているようです。本人は経験的に掴んでおり、言葉で意識していない場合もありますが、TPOに応じて望ましい行動や望ましくない行動を理解しています。
男性の場合は、男女の認知の違いを意識しないとうまく対応できないことが多いようです。女性は雰囲気をなんとなくわかっていますが、男性の場合分からない人は全く分かっていないことがあるので、男女の違いによる職場での苦痛は、女性の方が大きいかもしれません。
男は細かいところにフォーカスするのが得意、女性は全体を把握するのが得意ですが、医療でもその特徴は生かされています。女性が多い看護師が全体を把握し、医者が病気の部分にフォーカスします。「なんとなく様子がおかしい」ということを察知することについては、ベテランの看護師にはかないません。
また、看護師は井戸端会議をするように患者さんの具合をお互いに話して情報交換を行い、集団として状態を把握しますが、医者は黙々と検査結果を考察したり、処方を考えたりします。集中しているときに、看護師に次々に話しかけられると、考えがまとまらず非常に苦痛です。まさに上の「電話対応のような割り込みを減らせば、男性の仕事ははかどる」の通りです。
2007年09月06日
『ノウハウを学んでいるのに、なぜ、儲からないのか?』
吉井 亮介著 2007年9月30日発行 1470円(税込)
著者は、著名な経営コンサルタントである神田昌典氏の会社で、最高マーケティング責任者をされていた方です。今年から、「経営と人間成長のプロフェッショナル」として独立されており、本書は処女作です。
全体を通して、実践的なマーケティングの方法や心構え、コピーライティングの方法などが読みやすく書かれています。本書の前書きは、コピーライティング的に書かれており、それだけでも参考になります。ものを売る方であれば、多くを得るところがある本です。
コピーライティングは神田昌典氏と同じように、感情を揺り動かすことを重視されています。問題を提示して、その解決法を提示することが、コピーライティングの本質であるということです。
テクニカルなことも書かれてはいるのですが、やはりビジネスにおいては、根本的には価値を創り出す経営者のこだわりが必要とされるようです。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、こだわりはこだわろうと思ってもこだわりがないとこだわれません。それゆえ、こだわりには価値があります。
こだわりという言葉は、以前は否定的なニュアンスで使われることが多かったように思うのですが、いつの間にか肯定的に用いられるようになっています。モノやサービスがあふれているので、こだわらないと商品を差別化できません。こだわりが時代の流れとすると、将来気がついたら「オタク」という言葉も、肯定的に使われようになっているのではないかと思います。
こだわりを持つための方法は、単なる技術としては伝えられません。なぜならば、こだわりは自分の心の深いところから生じるからです。こだわりを技術として伝えられるとすると、その技術は自分の心について探求する技術としてです。
2007年09月01日
『「視聴率の怪物」プロデューサーの現場発想力』
王 東順著 品川 裕香/取材・構成
2007年6月20日発行 720円(税込)
「視聴率の怪物」といわれる、フジテレビのプロデューサー王東順への1年間にわたるインタビューをもとに書かれた本です。5年前に出版された本が、講談社+α文庫で文庫化されたものです。講談社+α文庫は、ビジネス関連の本を数多く文庫化しています。
王東順氏は「クイズ!ドレミファドン」や「なるほど!ザ・ワールド」など、日本人であれば多くの人が知っているものを含め、2000本以上の企画を実現されたそうです。
実現されたアイデアには、以前は全くなかったもので現在では当たり前になっているものも多くあり、そのことに企画力の凄さを感じます。
企画力の根源はどこにあるかということは、本書を読むとよく分かるのですが、やはり没頭する力です。常に幅広く関心を持ち、常に考え続けることが必要とされています。
興味を持って没頭できる能力は、才能の一つであると思わされます。創造性を発揮するには、5人の人が2時間ずつ計10時間考えるよりも、一人の人が10時間考え続ける方がよいようです。創造的なものは、個人からしか出てこない理由です。
いろいろとコツが書かれていますが、まずは没頭してからでないと、同じような発想・企画はなかなかできないでしょう。コツというと労力を省くというイメージがありますが、コツをつかむためには労力をかける必要があるというパラドックスがあります。
2007年07月10日
『あやしい商品が売れる、ごくまっとうな理由。』
山下 貴史著 2007年7月1日 1365円(税込)
著者はマーケティング戦略コンサルタントで、数冊のマーケティング関係の著作があります。いずれもやさしく書かれており、本書もきわめて平易に読みやすく書かれています。
マーケティングは心理学とも言われますが、本書も、結果的にほとんどが人間心理の解説になっているように思われます。
価値、価格、欲求、購買の意思決定はすべて人の心が関係しています。商品のイメージは人の心にあり、交換されるお金も実体はなく、きわめて心理的なものです。
本書はほとんどが日常的によく目にするものを通じて解説されています。ある程度マーケティングを知っている方なら、ほとんどがどこかで聞いたことがある話かもしれません。
買うことのほとんどは「なんとなく」であり、ほとんどが無意識の過程によりプロセスが進行しています。自分の無意識を意識化する日常的に方法として、ふだん何気なく買っているものの理由を考えてみるのも、マーケティング、そして自分自身の心を見つめるよいトレーニング方法です。
初めのうちは非常に疲れると思いますが、続けていると、自分を含めてみながいかに知らないうちに周囲に影響されて知らず知らずのうちに購入に至るかがわかると思います。
本書は、マーケティングについてある程度知っている方が読んで楽しめますが、あまり知らない方が読んだ方がより読みごたえがあるように思います。
2007年07月08日
『ブログ・イベントで女性をトリコにするマーケティングのコツ32』
経沢 香保子著 2007年7月10日 1365円(税込)
ブログ・イベントで女性をトリコにするマーケティングのコツ32
著者はトレンダーズ株式会社の代表取締役である経沢香保子さんです。本書では、おもに20〜34歳のキャリア志向の高い女性を「F1層」として、企業のPRの方法について書かれています。
F1層がマーケティングのターゲットになっているのは、おそらく潜在的なパワーを最も多く持っていると考えられているからでしょう。また、著者の経験とも重なるということもあるかもしれません。
クチコミ、ブログ、イベント、マスコミ活用を軸に、それらの考え方と方法について書かれています。具体的な内容については、トレンダーズのサイトに直接アクセスしていただくと、百聞は一見に如かずです。
トレンダーズのサイト内には、社長はもちろんのこと、社員全員のブログがあります。「トレンドレポート」という週一回のペースで行われているアンケートがありますが、このあたりは時代の流れをつかむヒントになりそうです。
企業としてはまだ上場されていないようですが、会社概要の株主構成を見るかぎりでは、明らかに上場志向のようです。残念ながら、財務情報は公開されていませんでした。
本書は、一般的なマーケティングやインターネットマーケティングの知識がある方にとっては、あまり新味はないかもしれませんが、あまり内容が深すぎないのも本書のマーケティング戦略の一つと思われます。
本書の役割としては、エネルギーがあり、仕事や起業を通して自己実現をしたいけれども、どこから手をつけてよいかわからないF1層について、企業にもF1層にも、最初の手がかりを提示するというところにあると考えられます。
2007年07月03日
『ビジネス法則の落とし穴』
東谷 暁著 2007年7月11日 798円(税込)
創刊されて間もない学研新書の最新刊です。著者は経済ジャーナリストで、『エコノミストは信用できるか』、『民営化という虚妄』などの、一般的に正しいと思われているものをあえて逆の視点から捉える一歩突っ込んだ本をよく書かれています。
本書も、パレートの法則(80対20の法則)、ランチェスター法則、最近のものではロングテールの法則など、よく知られる50の法則について、あえて他の視点から眺めて、それらが必ずしも常に正しいわけではないということを述べています。
50も法則があると、その法則について知るだけの目的で読むとしても、本書は役に立つと思います。それぞれの法則について、「過去実績度」「応用可能度」「成功予測度」をそれぞれ五段階で評価しています。
法則については、物理的なものですら時を経ると成り立たなくなることがあります。ビジネス法則については、その法則が知れ渡ると、その法則を使って利益を得ようとする人が多くなってるため、他の人との違いによって儲けを得られず、法則自体の意味がなくなることがよくあります。
ビジネスの本質について理解している人は、どんな法則が出てきたとしても、その法則を盲信してしまうことはないと思います。しかしながら、人は新たなことを理解して変化するのはしんどい面もあるので、ついつい楽な方を意識せず頼ってしまいがちです。
正規分布の法則や、返報性の法則などは、それぞれ数学的原理、人間心理に拠っているので、法則自体にはそれなりの普遍性があるとは思いますが、ビジネス上の効果は多くの人が使えば使うほど効果が少なくなってきます。
返報性の法則について述べると、タダでものをもらったらそれなりにありがたいとは感じるという点では普遍性がありますが、最近は以前ほど購入につながることがなくなっているという点では、前より効果が少なくなってきています。ビジネス法則は、ファッションなどの流行と同じで、多くの人が取り入れると価値が少なくなります。そのような意味では、本質的に無常性を伴います。
しかしながら、こだわらなければ過去のビジネス法則を知っているに越したことはありません。80対20の法則などは、医療の仕事にも応用できています。自分が受け持っている入院患者さんが40人であるとすると、だいたい2割程度の7〜8人くらいの方の症状が落ち着かないことが多く、自分の労力の8割位をその方々にかけることが多いように思います。入院している方のみならず、外来診療でも同様です。
本書はビジネス法則を学ぶためにも有用ですが、過去のビジネス法則を忠実に実践したにもかかわらずうまくいかなかった方は、本書を読むとより得るところが大きいかもしれません。
2007年06月15日
『売れないのは誰のせい?』
山本 直人著 2007年6月20日 714円(税込み)
売れないのは誰のせい?―最新マーケティング入門
新潮新書の最新刊です。著者は、博報堂で長年マーケティングの仕事をされていた方です。本書には現場で得られた知恵がふんだんに込められています。
著者は、マーケティングを「客の立場に立って知恵を使い続けること」と定義されています。自分の立場ではなく相手の立場です。また、「知恵を使い続ける」のところでは、「続ける」という部分が大切であると思います。なぜならば、常に客は変化し続けるからです。
著者によると、今までは日本では本格的な競争はなかったそうです。これからようやくマーケティングの考え方が、本当の意味で必要とされそうです。買い物という行為についても、今までは必要なものを得るためでしたが、これからは、買い物に人生観を投影するとようになるそうです。そのような点からも、ブランドの重要性について述べられています。
日本社会については、70年代の後半から80年頃に男女の役割や家庭の変化がはじまり、それが現在の消費活動に大きな影響を与えているということです。現代は、消費のターゲットが絞りにくくなっているため、広告の反応によって逆に消費者を捉える必要があるとしています。
テレビ広告やタレントを用いることについても、ご自身の経験をもとに適応などが書かれています。
最後に、「他者を知る」ということの重要性について繰り返されています。他者を知るということはいままでも大切でしたが、確かにこれからはさらに重要性が増しそうです。
全体的には、著者が大手広告代理店で仕事をされていたということもあり、大企業向けの内容になっていますが(中小企業はテレビ広告やタレントを使ったりはしないと思うので)、マーケティングの本質的な考え方が押さえられており、商売をする方であれば誰でも役に立つ内容になっていると思います。
2007年06月08日
『働かないで年収5160万円稼ぐ方法』
川島 和正著 2007年5月11日 1300円(税抜き)
著者は、1年前までは「平凡なサラリーマン」をされていたということですが、現在は自宅のインターネットによるビジネスでほとんど働くことなく、月収500万円を稼いでいるそうです。本書では、その方法について、具体的に書かれています。
オークションで月30万、アフィリエイトで月100万、情報ビジネスで月300万、最終的には年収1億を、読者の目標としています。
本当にこのようなうまい話があるのでしょうか?
残念ながら、私自身は実践していませんので、自分の体験として正否を判定することはできません。オークションの30万円は、手間を考えるとそれなりに釣り合っているように思います。アフィリエイトの100万円は、難しそうですが、やり方によっては可能かもしれません。
ここで注目すべきは、手間がかからないやり方ほど収入が上がることです。ここのところで、通常とは逆の思考をしないといけません。ある程度以上稼ごうと思ったら、労働時間や手間を増やすことによって収入を上げるのではなく、別の考え方や発想が必要ということです。
本書を読むとわかりますが、著者の文章はいろいろな意味で洗練されています。本全体が、良質なビジネスレターとなっています。本書で学ぶべきは、具体的な内容よりも表面的な表現の背後にあり、人の心理に訴えかける書き方や構成です。
アメリカのゴールドラッシュの時に一番お金を稼いだのは、金を掘り当てた人ではなく、金を掘るための道具や服を売った人であるというのは有名な話ですが、インターネットのビジネスにおいても、確実に儲けている人は、ビジネスで稼ぐための道具や方法を売っている人です。
いままでのネットワークビジネスにおいては、比較的少数の人数で枝分かれをさせてネットワークを広げる必要がありましたが、インターネットの出現により、1回の枝分かれで、万単位の人々を直接の枝にすることができるようになりました。それだけ取り分も増えていると思うので、理屈の上では爆発的に稼ぐことは可能なはずです。
商売をしている方で、このような本を読まれたことがない人は、稼ぐ稼がないにかかわらず、ネット上で展開されていることを知るためにも、1冊は本書のような本を読んでおいた方がよいと思います。
2007年06月01日
『グーグル革命の衝撃』
NHK取材班著 2007年5月25日発行 1000円(税抜き)
今年の1月にNHKスペシャルで放映された内容が、書籍化されたものです。以前に、ベストセラー『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』を読まれた方であれば、新たな衝撃を受けることはないかもしれません。NHKの取材力により、グーグル本社で取材をして幹部にインタビューをしているところなどが、読みごたえのあるところです。
グーグルにより世界で情報のフラット化が起こりつつあるということがよくわかります。著作権や個人情報などの問題点についても、かなりのページを割いて取材されています。
ちょっと話がそれますが、相場のテクニカル分析でエリオットの波動理論があります。上昇トレンドの時は、第1波から第5波まであり、一般的に3段上げの形を取ります。ものごとが広まっていくときにも同じような形を取ることが多いように思います。グーグルで考えてみます。
まず、グーグルの革新性や価値を、インターネット業界の人が注目します。これが第1波で、比較的小さい上昇波です。
次に、マーケティングをしている企業の担当者や、知的好奇心がある人々に知られます。これが第3波です。SEOが話題になったり、『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』などの本が売れていた頃です。
現在は、3番目の上昇波である第5波の直前のあたりであると思われます。一般的に、ある事柄について、NHKが特集を組んで放映するようなときは、最後の上昇過程の直前であることが多いように思います。
株式投資だと、そろそろ売りを意識し始めないといけない時期に当たります。
2007年05月17日
『社長、狙ってるお客さん違っていませんか?』
長谷部 光重著 2007年6月20日発行 1300円(税抜き)
著者は、秋田で開業されている、税理士・経営コンサルタントです。医院開業経営サポートを得意とされているようです。Viewシステム会という会を主催されており、1500以上の医院開業に携われたとのことです。
そのため、本書ではときおり医院経営についての話が出てきますが、メインのテーマではありません。私も医療業界で働いていますが、実際の仕事で直接参考にしようと考えて本書を購入したわけではなく、あくまで一般の経営やマーケティングの勉強のため本書を読みました。
本書の対象はタイトルからも想像がつくように、中小企業の経営者です。他と差別化するためには、経営やマーケティングについて一歩踏み込む必要がありますが、本書では、その一歩についてさまざまな角度から書かれています。
秋田は景気が悪いらしいのですが、おそらく著者が顧問をされている地元の企業を具体例を挙げて、いかに工夫をして生き残っていくかということについて、書かれています。本書は特に地方の方が読まれるとより役に立つと思います。私も昨年の秋に旅行で青森や秋田に行ったのですが、確かに両都市ともあまり景気が良さそうではありませんでした。
おもしろかったテーマを拾ってみると
- 市場で望まれる数字から1台引いたものが、フェラーリの限定車の適切な数字
- 東京以外はみな地方である
- 立地は変化する
- ドライバーの心理を理解する
- 団塊世代の定年後は50%の人が下流意識を持っている
- 夢は見るものではなく、描くものである
などです。ドライバーの心理うんぬんは地方が車社会のためのようです。
中小企業にとって重要な減価償却についての解説もありますが、これについては、岡本史郎さんの以下の本の方が分かりやすいように思います。
本書の読みどころは、あくまでマーケティングの具体例です。
2007年05月05日
『あっ、買っちゃった。』
松本 朋子著 2006年12月4日発行 1400円(税抜き)
あっ、買っちゃった。 一瞬でお客に反応させる快感マーケティング
著者はマーケッターの松本朋子さんです。顧客満足(CS)を越えた、顧客幸福(CH)を提唱されています。
消費の主役は女性です。日用品でも、贅沢品でも購入のときは、女性の影響力が隅々にまで浸透しているため、いかに女性が商品に期待を持ち、選択し、決定し、満足し、リピートするかについての理解は、商売をする上で非常に重要です。
本書のテーマはいかに女性にものを買ってもらい、幸福感を得てもらうかということです。文章も読みやすく、テーマがはっきり絞られており、主張も明快です。
著者は10年近くにわたり、買い物のレシートの分析をされており、本書ではその結果や女性脳・男性脳の違いから、女性の購入の理由を探っています。印象に残ったものをいくつか書くと、
- 購買は、気持ち良くて、ちょっとイケナイことをしたという感覚である
- 理性的な行為ではないので、考えすぎて売るとかえってダメ
- 本人も意識しないことが多い、過去の快感情報へのアクセスによる
- リピートのためには、期待による幸福が必要
- 女性の消費には身近な人との関係が重要
- 期待感は五感とイメージを用いて高める
- 購入後も幸福感に浸ってもらう
などとなります。
分析はテクニカルに思われますが、あくまで幸福感を持ってもらうことを主眼にしています。上を読み返してみると、女性が買い物をするときのメカニズムは、男性を選ぶときのそれとよく似ているように思います。
2007年04月28日
『最初のデートでプロポーズ!?』
ビル・ビショップ著 山田 貴久訳
2006年8月15日発行 1400円(税抜き)
最初のデートでプロポーズ!?―マーケティング・マイクが教える17の売れる魔法
出版されて、半年ちょっとの本です。本屋で目立つ本で、気になりながら買っていない本の1冊だったのですが、今回購入しました。著者はカナダにあるコンサルティング会社(英語)のCEOです。
この会社のホームページも考えてつくられているようで、まず最初に訪問者にコミットメントをさせています。本書自体が、マーケティング戦略の一環として出版されているように思います。
原題は、『How to Sell a Lobster』(いかにしてロブスターを売るか)ですが、日本語のタイトルは、目を引きやすいものになっています。口説き本かと思わせますが、マーケティングの本です。マーケティングの本ですが、女性に自分を売り込むときにも応用できます。
本書は17のテーマがあり、それぞれが1章ずつ当てられています。それぞれの章が、読みやすい物語となっています。章のタイトルは、「超訳」といえるほど、意訳されていますが、日本語のタイトルと同じように、原書よりコピー的に良くできたものになっています。
17のテーマのうち、いくつか紹介すると、
- 買う買わないより、どれを選ぶかの選択肢を与える
- 顧客が本当に必要としているものを売る
- まず、しっかりとしたマーケティング戦略を立てる
- 安売りはせず、高い値段で売るための工夫をする
- 少しのお金を投資してもらい、回収したくなるようにする
- 売り込まず、自己分析の指導をする
- 小さなところから着手する
などとなります。
相手の立場に立って、あせらず、頭を使ってということでしょう。一番重要なのは、相手の役に立つものを提供するということであるように思います。間合いが必要なのは、世界共通のようですね。
2007年03月26日
『成功の公式』
マーク・ジョイナー著 早野 依子訳
2007年3月5日発行 1300円(税抜き)
タイトルからは内容がはっきりしませんが、いかにして売るかということをテーマにしたマーケティングの本です。
「成功の公式」は3つのステップからなります。あらゆるマーケティング理論は、煎じ詰めれば以下の3つに集約され、あらゆるビジネスの成功者はこの公式に従っているとのことです。
- 「魅力的な提案(Irresistible Offer)」をする
- 「喉の渇いた群集」にグラスを差し出す
- 「2杯目のグラス」を買わせる
わかりやすくまとめると、「数多くの人に欲しいものを継続的に買ってもらう」ということですね。
きわめてシンプルな3つのステップですが、3つのうちいちばん難しいのはどれでしょうか?
答えは1です。2と3の具体的な方法については、本書にもありますが、人間の心理を利用したテクニカルな方法がほぼ確立されてます。本書を読んで最も役に立つのは、よい商品やサービスあるいはアイディアを持っていながら、効率的に売る方法を知らない方です。
本書の主張したい内容はシンプルなので、原理原則について述べられているページは少なく、ほとんどが、著者の簡単な解説の後、多くの成功者たち本人による解説でしめられています。本書の内容自体は、かなり前から日本でもダイレクトレスポンスマーケティングとして紹介されています。
ダイレクトレスポンスマーケティングはマーケティング関係の本を読む人の間ではかなり広まっており、現在はこの方法を使ってものを売っている人と使わずに売っている人の差がかなりある状態だと思います。この方法は、とくにインターネットとの相性がよいので、知らないとスタート時点からかなりのハンデを背負うことになります。
舞台裏を知ってしまうと、人間心理を利用してお金を集めているようで、少々ズルいと思われる方もいるかもしれません。しかしながら、買う方から見ると、洗練されているだけに、売るもの自体がよければ満足度も高いことでしょう。
心理テクニックについては、人と接するときも同じかもしれません。心理テクニックを用いて人と接することについて抵抗ある方もいるかもしれませんが、相手の立場からするとテクニックを使った方がよいことがほとんどです。とくに男女では自然にはなかなか相手を理解できないので、必要なことが多いですね。テクニックを使うのも愛でしょうか。
2007年03月20日
『キミがこの本を買ったワケ』
指南役著 2007年2月20日発行 1300円(税抜き)
表紙を見てもおわかりのように、装画・挿画のセンスが非常によい本です。表紙にあるようなかわいらしくてユニークなイラストが、本文中にもふんだんにあります。
挿し絵のセンスがよすぎて印象に残るため、文字の内容が頭に残りにくいのが本書の弱点といえるほどです。作者の指南役についてはこちら。
買うという行為は奥の深いお金と絡んでいるため、実は非常に奥の深い行為です。本書では「なぜそれを買うのか」という主題をさまざまな点から考察しています。
広告の具体例を数多く挙げていますが、効果については、実際に使ってみないとわからないことが多いようです。全体を通じて、心理的な面からの考察が多く、広告を心理的に分析しているというよりも、人間心理を広告をネタにして分析しています。
いくつかテーマを拾ってみると
- 用もないのに毎日コンビニに寄る理由
- 1つ手前の角を右に折れたくなる理由
- 「エロ」と「値引き」と「品切れ」に弱い理由
など、日常的な感覚で誰もが共感できることです。どちらかというと、役に立つというより、楽しめる本です。
人は買うときにそれらしい理由をつけていますが、なぜ買ったのかについて、本当のところはよく考えるとわかりません。潜在意識の影響が大きいということですね。まあ、買うことに限らず多くの選択がそうですが。本書のおもしろさは、わからないことについていろいろな角度から語ることです。
異性を選ぶときもいろいろと選ぶ理由をつけますが、後付けのことが多く、選んだ後もなぜ選んでいるのか理由がわからなくなります。意識していることと、本当に理由が異なることもよくあることです。異性を選択することや口説くことなどは、売買ときわめて似ています。自分という「商品」を売り込んで、受け入れるかどうか相手に選択してもらっているからですね。
王道は売買と同じく「商品」の価値を高めて、よい「顧客」に納得して高く「買って」もらうことでしょう。マーケティングや広告がもっとも効果があるのは、知られていないよい商品の場合です。
商品自体がよくない状態で、マーケティングや広告だけをパワフルにしても、結局はクレームなどが増えて先細りになってしまい、長い目で見るとかえってよくないようです。
2007年02月17日
『金融マーケティングとは何か』
三沢 洋著 2006年11月28日発行 700円(税抜き)
新書ブームに乗って去年創刊されたソフトバンク新書の1冊です。ソフトバンク新書は幅広い内容からバランスよくテーマが選ばれていますが、今のところ大ベストセラーはないようです。新書のベストセラーについては、『バカの壁』、『人は見た目が9割』、『国家の品格』などの新潮新書が他を圧倒しています。
本書の著者は、シティバンク、フィデリティ投信、チューリッヒ、東京スター銀行などの外資系金融機関で長年マーケティングに携わってこられたようです。本書は著者の試行錯誤の体験が読みやすく書かれています。
1990年代の前半は、外資系金融機関は現在ほど馴染みがなかったこともあり、苦労されたようです。夕刊タブロイド紙に住宅ローンの広告を出したり、開店イベントでアロハシャツを着たりと、当時としてはタブーであったことに、周囲の反対に遭いながらも、次々と挑戦して成功したエピソードなどがあります。
やりたがられていないだけに心理的なハードルを乗り越えるのはむつかしいとは思いますが、一般的に成功の要素は他でやられていない、あるいはやりたがられていないところにあることが多いようです。
投信や保険をいかにして売り込んだかについては、売る側の視点が参考になりました。我々としては、金融商品は買う立場に立つことがほとんどで、うまく買うためにも売る方の立場を知っておくことは重要です。
自分がある立場に立っているときは、反対の視点から逆に見てみることは一つの重要なポイントです。例えば、ものを買うときは売る方の視点から、雇われているときは経営者の視点から、生徒の立場であるときは先生の視点から、男性であれば女性から、待っている場合は待たせている方から、食べるときは料理を作る方からなど、逆の立場に意識的に立つと新たに見えてくるものがあります。
本書は、いかに金融商品を売ったかについての有益な本ですが、逆の視点から読むといかに金融商品を選んで買うかという点でも有益な本です。
2007年01月30日
『客が客を呼ぶ「集団感染」のスゴイ仕掛け』
プロフェッサー杉村&高等マーチャント戦術研究所著
2007年2月2日発行 1400円(税抜き)
客が客を呼ぶ「集団感染」のスゴイ仕掛け―ゼロから売上900億円つくった私の方法論
営業・マーケティングで飛び抜けた業績を上げる方は、何らかのコンプレックスをエネルギーとしている場合が多い印象があるのですが、本書を読む限りにおいても、著者も「国際派エリートとして7年間稼ぎまくった」後、「自尊心すら粉々に打ち砕かれていく日々」を過ごされたそうです。
本書は、その後、「たった一人、あほに徹して、個人向金融商品をほぼゼロから5年間で売上げ917億円と、前代未聞・常識破りの記録を達成した」ノウハウが語られています。
タイトルからもおわかりのように、マーケティングを集団感染にたとえています。商品の本質を心の変化ととらえ、いかに商品を見込み客に見せるか、商品を演出しプロデュースするかから始まり、商品を広める最適なターゲットを探すか、いかに効果的に集団感染菌をばらまくか、効果的な集団感染菌をつくって、培養・自己増殖させるかなど、著者の膨大な数の徹底した試行錯誤を通じて得られた手法が書かれています。
本書はインターネットを通じてのマーケティングについては、著者の力量が大きすぎるためか、あまり重視されていませんが、今の時代にネットをあまり利用していないところに、かえって凄みを感じさせます。
全体を通して感じられるのは、戦闘的なイメージです。戦争が始まった場合は、軍事戦略の目的はただ一つで、いかに戦争に勝つかということですが、本書の場合は、いかに商品を売るかです。
アマゾンのレビューを見ると、すでに集団感染は始まっているようです。このブログもすでに感染してしまっているのでしょうか・・・?